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研究者の窓ではタツノオトシゴや環境問題などに
関わる研究者の情報を紹介しています

目 次

第1回 : タツノオトシゴと共生するクラゲの話

第2回 : 海がよみがえる?!海洋保護区「マリンリザーブ」の話

第3回 : 海がよみがえる?!海洋保護区「マリンリザーブ」の話 その2

第4回 : 不思議なクラゲ 「カイヤドリヒドラクラゲ」の話

第5回 : タツノオトシゴ名前の由来の話




第4回:不思議なクラゲ 「カイヤドリヒドラクラゲ」の話
 

京都大学 フィ-ルド科学教育研究センタ-
久保田信先生の研究報告より

 研究者の窓 第1回「タツノオトシゴと共生するクラゲ」の話でお世話になりました京都大学の久保田先生より不思議なクラゲをご紹介頂きました。
 その名は「カイヤドリヒドラクラゲ」です。生き物好きの方でも、はじめて名前を耳にする方が多いのではないでしょうか。一体どのような生き物かといえば、「貝」に「宿る」「クラゲ」・・・なのでしょうか、やはり?

 まず一般的なクラゲがどのような生涯を送るかといいますと以下のようになります。

①成熟したメスとオスのクラゲの卵と精子の受精によって、プラヌラと呼ばれる卵のようなものが生まれます。
②プラヌラはポリプと呼ばれる幼生に変態します。ポリプは浮遊をせずに岩などに付着して成長します。
③ポリプはクラゲ芽を形成し、それがやがて浮遊するクラゲとなります。

 
一方、②のポリプはその後の変態を行わずに無性生殖(
1つの個体が単独で新しい個体を形成します)で同様の形をしたポリプを増やすこともできるので、クラゲの繁殖力には驚かされます。
 さて、このカイヤドリヒドラクラゲはその名の通りポリプがイガイやカキなどの多様な二枚貝の外套腔(がいとうこう)という貝殻の内部に住みつく生態を持ちます。カイヤドリヒドラクラゲの仲間は
1935年にイタリアのナポリ近郊でアサリから発見されて以来、世界各地で見つかり、分類に関する研究が進められてきました。
 しかしこのグループは分類が非常に困難だそうです。通常クラゲ類の分類は水槽内で飼育を行いながら、形を変えていく成長を観察して解明していきますが、成熟クラゲの形態が同じなのに、それぞれのポリプの形態が異なっているなど、とても複雑で未だに確認されていないことが多くあるそうです。

 久保田先生は二枚貝から取り出したカイヤドリヒドラクラゲのポリプを野外観察や屋内での飼育実験をすることによって、他のポリプでは見られない様々な不思議な生態を発見しました。

A . 光や機械的刺激によって逃避行動をおこさず、エサを食べても体を縮めず、触手を伸ばし続ける。
B. 無性生殖による新しいポリプの発芽をしたり、クラゲとして遊離後、あるいは体の上半部が退化しても、時計回りか反時計回りに一日中動き続けている。
C. 野外では一年中、周囲の明暗に関わらず、成熟クラゲは夕刻以降のほぼ一定時刻に遊離する。

 カイヤドリヒドラクラゲはノーベル化学賞を受賞した下村脩先生の研究によって有名になったオワンクラゲと同じ「軟クラゲ」の仲間ですが、硬いキチン質の殻をまとわず、動ける特性を持ったユニークな存在だそうです。
 『カイヤドリヒドラクラゲは昆虫のカゲロウのような存在です。クラゲに成熟してこの世に生まれても、食事もとらず、またとれず、ただ有性生殖をして子孫を残し、すぐに死んでしまう、はかないクラゲなのです。不老不死のベニクラゲとはまったく逆の存在です。』(久保田先生談)。 

 なお本種は有性生殖を行う遊離したクラゲからであれば、光をコントロールすることで好きな時間帯に雌雄を交配させて配偶子を出させることができるそうです。
 そして驚くことに、クラゲ芽を形成したポリプから夕刻に遊離する成熟クラゲを得て、前述の①~②の発育過程がわずか2日間程度で観察できてしまうとのこと(温暖な季節が条件です)。
 しかも宿主(しゅくしゅ)は日本全国の海岸に生息するムラサキイガイが主なので入手が簡単です。

 これをお読みの海好きのお父さん、お母さん方、今夏のお子様の自由研究のテーマにいかがでしょうか?




写真(久保田先生提供)
上:日本産カイヤドリヒドラクラゲのポリプ
下:日本産カイヤドリヒドラクラゲの成熟クラゲ


今回の情報は海洋出版の月刊海洋2009年5月号
総特集 我が国における刺胞動物研究-I
「二枚貝共生性カイヤドリヒドラ類(ヒドロ虫綱,軟クラゲ目)に関する最近の生物学的研究」
に掲載されています。

不老不死のクラゲ「ベニクラゲ」研究の第一人者

久保田信先生のホームページはこちらから

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第5回:タノオトシゴ名前の由来の話
財団法人海洋生物環境研究所
青山善一先生の研究報告より

 タツノオトシゴハウスでは日常のタツノオトシゴ飼育を通じて多くの人たちとの出会いがあります。
 水槽にいるタツノオトシゴを見た方からよく「初めて本物のタツノオトシゴを見ました」という感想を頂くのですが、一方で水槽のタツノオトシゴを見て「これはなんという生き物ですか?」と聞く人はほとんどいらっしゃいません。小学生はもちろん、5歳ほどの幼児でもタツノオトシゴを知っている子供たちが大勢います。タツノオトシゴの有名ぶりにはいつも驚かされます。
 普段、食卓で見るはずのアジやブリ(ハマチ)などの名前は知っていても、実際に泳いでいる魚を見たときに名前と形態が一致しないという話はよくありますが、タツノオトシゴにおいては例外なようです。
 奇妙で愛らしい形態が特徴のタツノオトシゴですが、実際には日本だけでもタツノオトシゴという種類以外にもイバラタツ、タカクラタツ、オオウミウマ、クロウミウマ、サンゴタツなど多くの仲間がいます。しかしどの種を見てもらっても「タツノオトシゴ!」とひとくくりで呼ばれます。
 なんとも味わいのあるこの名前のルーツを探るべく、今回は魚名研究家の青山善一先生にタツノオトシゴの由来をうかがいましたのでご報告致します。

 まず、学術上の「タツノオトシゴ」という和名を付けた方は、日本の魚類分類学の創始者である田中茂穂博士(故)だそうです。現在図鑑に載っている日本産魚類の和名の多くは、田中博士とそのお弟子さんの阿部宗明博士(故)によって付けられたものです。しかし田中博士の有名な書物の一つ水産動植物図説(1933)に「タツノオトシゴは、普通にタツノオトシゴと云ふが、何れの地で言ひ初めたかはわからない」と記述があり、タツノオトシゴという呼名を最初に誰が付けたのかは不明だそうです。

タツノオトシゴの地方名
(提供:青山善一先生)

 タツノオトシゴは漢字で「 龍(竜)の落とし子」と書きます。これは中国に伝わる伝説の生き物である龍に、もしも赤ちゃんがいたらこんな姿であろうということで、本種の外観を龍の赤ちゃんに例えて呼名されたものと考えられるそうです。
 また、オスのお腹にある育児嚢(いくじのう)からは、他の魚類のように卵ではなく親と似た稚魚が1尾ずつ海中に産み落とされることから、オトシゴ(落とし子)と呼ばれたことも考えられています。
 しかしながら昔から全国各地でタツノオトシゴと呼ばれてきたのかと思えば、そうではないようです。
 青山先生が調査した地方名を右欄に並べました。ここにはかつて呼ばれていたものから現在も呼ばれているものまで含まれます。
 地方名は多様で、「龍」に由来するものもあれば「馬」に由来するものもあり、またリウグウノコマ(龍宮の子馬)のように龍と馬両方に由来するものあります。
 もっとも多いのは馬に由来する呼名で、ウマノコ(馬の子)やウマノカオ(馬の顔)などがあります。タツノオトシゴは中国では「海馬」、英語ではseahorseですから世界中で共通していますね。
 龍に由来する呼名ではタツノオロシゴやタツノステゴなどがありますが、ジャノコ(蛇の子)のような蛇が用いられる場合にも龍と蛇は同意語とみなされるそうです。また「ミズチノコ」という呼名もでてきますが、「ミズチ」とは頭に角と体側に四脚を具えた蛇に似た想像上の動物で、これも龍と同意語とのことです。
 それ以外にも東北弁で「鬼の子魚」を意味するオクジノマエや鯱鉾にたとえたシャチノコといったものもあり、地域や人によっていろいろな見方があったことがわかります。
 江戸時代には魚とは別の生物と考えられていたらしく、貝原益軒の大和本草には「海中に生ずる小虫なり、頭は馬の如く,腰はエビの如く、尾はトカゲに似たり」とあります。さぞかし奇妙な生き物としてとらえられていたことでしょう。

 そしてここには掲載されていない地方名が皆さんの地域にもまだまだあるかも知れません。是非探してみてください。

  ウマ

  ウマイオ
  ウマイヲ
  ウマウオ
  ウマウヲ
  ウマオウ
  ウマッコ
  ウマノオ
  ウマノカオ
  ウマノコ 
  ウマヒキ  
  ウミウマ 

  ウミウマガア 
  ウミウマガオ
  オクジノマエ
  オクジノマヘ 
  オクリノマイ
  カイバ 
  シャチノコ 
  シヤツノコ  
  ジャノコ   
  タツガシラ  
  タツノオトシゴ 

  タツノオロシゴ 
  タツノヲトシゴ
  タツノコ 
  タツノステゴ
  ミズチノコ 
  ミツチノコ 
  リウグウノコマ
  リュウグウノオバ
  リウグウノヲバ
  リュウグウノコマ 

  リユウグウノコマ 

  リュウノコマ 
  リユウノコマ 
  リョウノコマ 
  ヲクジノマエ 

広島,玄海,壱岐,紀州大地,
辰が浜,知多
高知,土佐
高知,土佐
紀州塩屋,高知
紀州塩屋,高知

松島
塩屋
富山
高知
紀州串本,串本
和歌山,三崎,紀州,高知,
広島,小野田,堺
沖縄
沖縄
仙台
仙台
仙台
讃岐
能登宇出津,宇出津
能登宇出津,宇出津
富山
鳥羽
紀州二木島,有明海,下関,
江ノ島,寺泊,象潟
土佐
佐渡
高知

讃岐
讃岐

加賀

田辺,和歌山田辺,辰ケ浜,
九州
田辺,和歌山田辺,辰ケ浜,
九州
三崎
三崎
三崎
仙台
 
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